【2013年度合宿報告】2日目―午前その3

・クラヴィッター先生の勉強会

合宿二日目に行われたクラヴィッター先生の授業では「Deutsche Haiku」が扱われました。

俳句は5-7-5という短さで世界でも類をみない定型詩なのですが、それを模倣してドイツ語で書かれた俳句を「Deutsche Haiku」といいます。しかし、ドイツ語で俳句を作るというのは中々に困難でありました。それは、日本語の一音一音の長さは一定であるのに対しドイツ語は不定であるし、日本語のほうが同じ 母音の数でも伝えられる情報が少ないため、5-7-5の十七音では齟齬が出てどうにもしっくりいかなかったためです。そのために、「Deutsche Haiku」への取り組みに挫折したドイツ俳人も多くいたようです。しかし、今日ではよりドイツ語、西洋語の特性にあった17音よりすくない10-14音からなる俳句の型が主流になり、他の西洋諸国の俳人の間でも俳句がその型で読まれるようになってきました。

授業では初めに、松尾芭蕉の「古池や蛙飛び込む水の音」をドイツ語に訳されたもの3つを比較しました。どの訳も趣が異なり「水の音」の部分を擬音を使い訳したものや、逐語的に訳されているものであったりと三者三様で翻訳の奥深さが感じられました。

その他に、現代日本での生活を表現した俳句も扱われました。朝の駅での通勤ラッシュを波に例えた俳句などもあり、ちょっとニヤッとしてしまうような俳句がいくつかあり、ドイツ俳句の面白さがよくわかりました。

(文責 3年 雨宮)

Haiku

Haiku

【2013年度合宿報告】2日目―午前その2

・山本先生の勉強会

山本先生の勉強会では、H.C.Artmannの詩を勉強しました。4篇ほど作品を音読して、それぞれ訳し、気付いたことを一人ひとりが発表し、意味などを全員で考えていきました。一見、寝ない子どもを寝かしつける為の歌、のようであっても、その実皮肉な内容であったり、含んでいることが大人向けであったり、(あくまでこちらの解釈ですが、)色々と深読みできる作品でした。人物名など固有名詞が頻繁に出てきて、独和辞書を引いても載っていない単語がかなり使われていました。こういった、元々何かの映画やおとぎ話の知識がなければわからないものも多く、苦戦しましたが、少しずつ皆で意見を出しあって全体像をつかんでいく作業をしていけたと思います。全ての詩を分析していくにつれ、スペルを多少変えてまで韻やリズムを大切にした、他の形態にはない詩独自の特徴が浮き彫りになりました。
個人的には、今までドイツ語文学は物語かエッセイのようなものにしか触れてこなかったので、とても良い勉強になったと感じています。

(文責 二年 五嶋)


Allerleirausch. Neue schoene Kinderreime.

Allerleirausch. Neue schoene Kinderreime.

【2013年度合宿報告】2日目―午前その1

・藤井先生の勉強会

7月の東京は気温が35度近くあります。合宿から早3ヶ月…毎日暑いですし、ゲリラ豪雨で大変です。このような状況で、雪の積もった軽井沢での授業を思い出すなんて無理!と思っていました。しかし、どうでしょう、この写真をご覧下さい。素晴らしい写真だと思います。和気あいあいとしながらも、真剣に学んでいるこの写真を見て、あの楽しかった勉強会を思い出しました。
今年の藤井先生の勉強会は音楽と歌がテーマでした。
まず吉田秀和さんの文章を読み、その中で取り上げられている曲を実際に聴き、みんなで意見を言い合いました。1曲目はヴェルレーヌの詩にフォーレが曲をつけた『月の光』。2〜3曲目は全てブラームス作曲の『子守唄』『日曜日』でした。『月の光』は静かで優美な曲でした。フォーレのフラット五つの変ロ短調によって表現される、すっと消えて行く感じは、同じ詩に作曲をしているドビュッシーのものと大きく異なっています。どちらもそれぞれ素晴らしい曲です。『子守唄』は曲の持つリズムが、ゆりかごのゆれを表していて、聴く人に安らぎをもたらします。しかし、安らぐだけじゃないのがこの曲です。歌詞に「あしたの朝、神様がお望みなら またお目々がさめますよ」という部分があり、「もし神様が望まなければ目が覚めないのか…こわい」という意見が多くでました。『グリム童話』や『砂男』など、ドイツはひやっとするお話が多いようです。一転、『日曜日』は恋を歌う歌詞に合った、明るく元気の良い曲でした。リズムもいいです。ドイツ語の歌詞が短く、繰り返しが多いので、歌いやすいのではないでしょうか。日曜日はチャンスなのです。

藤井先生はいつも学生がのびのびと発表できる、とても楽しい空間を作りだされます。この日も、みんなどんどん発表して意見を交換し合い、疑問点は納得するまでとことん考え抜くことができました。このように、普段あまり接することのない学年の人とも、積極的に関わり合うことができ、新鮮で、貴重な時間になりました。楽しかったです。
最後に恒例のキャッチコピーを発表したいと思います。今年は季節の変わり目で、雪が降って非常に寒い軽井沢でしたが、丁度、勉強会で音楽を聴いたあたりから少し暖かくなりました。音楽を聴いて、心も空気も暖かくなったので、今年の勉強会は「春を呼ぶ音楽祭」にしたいと思います。来年の勉強会では何をするのか、今からとても楽しみです。
(文責 3年 仁科)

永遠の故郷――夜

永遠の故郷――夜

フォーレ:月の光(フォーレ歌曲集)

フォーレ:月の光(フォーレ歌曲集)

ブラームス:歌曲集(6枚組)/Brahms: Lieder

ブラームス:歌曲集(6枚組)/Brahms: Lieder

【2013年度合宿報告】1日目

<ドイツ語ドイツ文学コース恒例の合宿が、今年も4月21日から23日にかけて軽井沢セミナーハウスで行われました。
合宿の様子を参加者の皆さんに報告して頂きます。>


・2年生発表
一日目の夜の読書会では、恒例の二年生による発表が行われました。
発表者は宮田くん。予定ではもう一人いたのですが、急遽来られなくなり、彼の独壇場となりました。

課題テキストはボート・シュトラウス『脅威の理論』。かなり独特のあらすじを持ち、色々な解釈がなされうるような、難解な作品です。
宮田くんはイニシャルとして出てくる登場人物の「S」とフロイトが提唱した概念「エス」との関連を指摘し、フロイトの理論を当てはめながら作品を解釈する、意欲的な論を展開しました。入念な準備が感じられるしっかりした内容と、堂々とした話し方が素晴らしい発表でした。
それをたたき台にして、学部生、院生、教授を問わずに意見を出し合う質疑応答へと進みました。

なごやかな雰囲気でありつつも鋭い考察をお互いに問う、そんな議論は独文ならではのものです。
それぞれが自分の視点を提示し、そこから新たに興味深い意見が生まれ、作品の読みがさらに深まっていき申し分のない読書会となりました。めでたしめでたし。

(文責 3年 愛甲)

マルレーネの姉―二つの物語 (『新しいドイツの文学』シリーズ)

マルレーネの姉―二つの物語 (『新しいドイツの文学』シリーズ)

Strauss, B: Marlenes Schwester

Strauss, B: Marlenes Schwester

リンダ・コワラン(Linda Koiran)氏講演会

早稲田大学文学部・文学研究科ドイツ語ドイツ文学コースでは、パリ国立高等鉱業学校・
パリ理工科学校の講師であるLinda Koiran氏をお招きし、下記の通り講演会を開催いたし
ます。皆様のご来場を心より歓迎いたします。


Linda Koiran 講演会

演題: "Auftauchen": Aktuelle Polyphonie deutsch-asiatischer Stimmen
    im gegenwärtigen deutschsprachigen Raum

日時: 7月30日(火)16時30分〜18時00分

場所: 戸山キャンパス39号館6階 第7会議室

使用言語: ドイツ語(通訳なし)

参加申し込み・入場料: 不要


主催: 早稲田大学文学部・文学研究科ドイツ語ドイツ文学コース

問い合わせ先: 03−5286−3645

                     (文責:助手)

Littérature(s) sans domicile fixe / Literatur(en) ohne festen Wohnsitz

Littérature(s) sans domicile fixe / Literatur(en) ohne festen Wohnsitz

テックス・ルビノヴィッツ(Tex Rubinowitz)氏講演会のご案内【2013年6月4日(火)】

作家、画家さらには音楽家としても幅広く活躍している
テックス・ルビノヴィッツ氏をオーストリアからお招きし、下記の要領で講演会を開催いたします。
皆さまふるってご参加ください。


テックス・ルビノヴィッツ氏講演会
【演題】Rubinowitz erklärt Rubinowitze.
【日時】2013年6月4日(火)18時〜20時
【場所】戸山キャンパス 39号館 第七会議室
※事前申し込み不要、どなたでもご参加いただけます。


テックス・ルビノヴィッツTex Rubinowitz)

1961年ドイツ・ハノーファー出身。
1984年にウィーンへ移住。以降創作活動を始める。
現在は風刺画家として、Spiegel online やFrankfurter Allgemeine Sonntagszeitung等に定期的に
作品を寄せているほか、個展も多数開催。
楽家、作家としても活動している。


【お問い合わせ】
早稲田大学文学部ドイツ語ドイツ文学コース コース室
TEL 03-5286-3645



岡田素之教授・E. シャイフェレ教授 連続最終講義のご報告

去る2013年3月8日(金)に、長年早稲田大学で教鞭をとってこられた、
岡田素之教授とエーバーハルト・シャイフェレ教授の最終講義が行われました。

最初に14時から、岡田教授の講義「カンディンスキーとイメージの演劇」です。
司会進行は相澤正己教授が務めてくださいました。


文学・哲学問わず、ドイツ語圏の様々な作品に造詣が深い岡田教授。
私達学生も、幾度となく先生のご教養に助けられ、そして影響を受けてきました。
講義は、そんな岡田教授らしい、ユーモアあふれる話しぶりで進んでいきました。
スライド資料の効果も相まって、カンディンスキー演劇の独特な世界に引き込まれました。

講義の後の質疑応答の様子です。
活発な議論が繰り広げられました。
岡田教授の貫禄が感じられながらも、どこか飄々とした受け答えが印象的でした。


花束贈呈です。
岡田教授、本当にありがとうございました。お疲れさまでした。


16時からは、エーバーハルト・シャイフェレ教授の講義
「Was meint Schillers These, der Mensch sei nur da ganz Mensch, wo er spiele?  
人間は遊ぶ場合のみ完全に人間である,というシラーのテーゼの意図は?」」。

松永美穂教授の通訳付きで行われました。


司会進行の藤井明彦教授の
「エーバーハルトは、優れたゲルマニストだけではなく、我々にとっての優れた教育者でした」
という紹介のお言葉が印象的でした。


早稲田に赴任した25年前、最初の講義もシラーについてであったというシャイフェレ教授の、
まさに今までの研究成果が詰まっているようなお話でした。


シャイフェレ教授、本当にありがとうございました。


講義の後の懇親会の様子です。
大学内外から、多くの先生方や卒業生の参加があり、2人の先生との思い出話に花を咲かせていました。


岡田素之教授、エーバーハルト・シャイフェレ教授、
長年の早稲田でのご活躍、本当にお疲れさまでした。
そして、ありがとうございました。
退職されても、これからも私達の先生として、変わらぬお付き合いをよろしくお願いいたします。


(文責:田邉)