【2013年度合宿報告】3日目

・大久保先生講義「前衛(アバンギャルド)という概念について」

大久保先生の講義では、前衛(アバンギャルド)芸術の中に印象派は含まれるのか、という点を中心に、前衛という概念について論じられました。
印象派は前衛芸術には含まれないというのが定説ですが、「今ではフランス古典の代表のように思われている印象派というのが、出てきた当初は圧倒的多数に酷評され批判される、フランス絵画の革命以外の何ものでもない、前衛的なものだった」とする本の引用を交えつつ、その定説に疑問を呈されていました。
また、前衛という言葉が本来は軍事用語で、軍隊において本隊に先んじて戦地に赴く先見部隊であり、それが比喩的に使われるようになったことにも触れられていました。
普段いろいろな分野で「前衛的な」という表現を耳にしますが、その意味をもう一度考え直すことができました。


・シャイフェレ先生講義「Paul Boldtの詩について」

シャイフェレ先生の講義では、Paul Boldtの詩について論じられました。背景として20世紀初頭のベルリンの表現主義運動が社会、政治と結びついていたことが述べられ、ボルトの5つの詩の中にも売春婦(市民社会の犠牲者のイメージ)のモチーフが用いられているとの指摘がありました。講義の中では5つの詩「ABENDAVENUE」「FRIEDRICHSTRASSENDIRNEN」「LINDEN」「BADENDE MÄDCHEN」「ERWACHSENE MÄDCHEN」が取り上げられ、ソネットという非常に難しい、厳密な形式をとりつつ下品な言葉を使っている点、人を物に例える比喩が見られる点、教養を必要とするような神話的、歴史的モチーフなどが用いられていない点、「黄金の静けさ」「緋色の微笑み」などといった、色を使った大胆な形容、などの特徴が指摘されていました。

シャイフェレ先生は昨年度に退職されていますが、わざわざ合宿にお越し下さり、講義をしてくださいました。本当にありがとうございました!

(文責 3年 中村)


印象派という革命

印象派という革命