【2013年度合宿報告】2日目―午後
・3年生発表
昼の自由時間を思い思いに過ごした2日目の夜は、3年生による発表が行われました。
発表者は安藤さんと中村さんのふたりです。
○『神の剣』に描かれた芸術
安藤さんの発表はトーマス・マンの『神の剣』が題材で、その中でも話の中心である「マドンナの絵」に注目したものでした。
書き出しの“ミュンヘンは輝いていた”という言葉は書かれた当時のミュンヘンで栄えたユーゲントシュティールと呼ばれる芸術様式を指しており、官能的と称されるマドンナの絵と「無邪気なまでに耽美的」だか「ときには通俗的」と言われるユーゲントシュティールの特徴は合致します。
また、登場人物のモデルとなったと考えられる人物の時代の絵と作中に登場するマドンナの絵(と思われるもの?)が挙げられ、それぞれの時代の女性像が比較されました。
発表ではユーゲントシュティールのユーゲント=青春という言葉から、現代の老人の扱われ方(本当に今の時代は“老人を大事にしている”か?など)といった話も先生方から挙がり、いろいろな方向へ話の広がる発表でした。
安藤さんは体調を崩してこの日の午後から合宿に参加、ということで、本当にお疲れさまでした…!
○マルレーン・ハウスホーファー 『壁』について
ある日突然あらわれた謎の“壁”によって世界と隔絶された女性が数年過ごした自給自足の生活を回想しながら書き記す、というスタイルで書かれたハウスホーファーの『壁』は、発表中に様々な疑問を生み出す内容でした。
“壁”に対する女性の反応や“壁”の向こう側にある死の奇妙さなど疑問を感じる部分は尽きず、この話がどういったものであるかをぼやけさせているようで、まとめに挙げられたこの話のいくつもの読み方はどれもが正しいように思わされます。
女性が書き連ねる回想には“壁”があらわれる以前のことも記されており、その中には社会生活から感じる圧迫の息苦しさが見て取れます。
また、女性の成長した娘たちへの不快感と一緒に暮らし始めた動物たちへの愛情は、女性が一方通行の愛情しか持てないことをあらわしているようでもあり、この“壁”の中の生活という特異な状況を用いて著者が現代社会に感じることを滲ませているようでもあります。
最後に中村さんが引用した部分では、意味を見出すことの無意味さとそれでも見出さずにはいられない人間の性(さが)が書かれていますが、まさに意味を見出さずにはいられない物語だと思いました。
長編小説をわかりやすくまとめ上げた発表で興味深かったです。中村さんもお疲れさまでした!
発表のあとは恒例の飲み会で、2日連続みなさんそれぞれに楽しまれたようです。
私も楽しく過ごせました。
本当に発表したお二人は本当にお疲れさまでした。
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