【2010年度合宿報告】2日目―パート3―

それでは、3年生による発表報告です。

<3年発表>

「なぜ文章は削除されたのか ―Thomas Bernhard “Der Italiener”の末文をめぐって―」
 発表者:香山政人(3年)


 本発表において香山は、トーマス・ベルンハルトの『イタリア人 断片』が断片作品であることに注目し、削除前の版と削除後の版を比較した上で、削除後においては「イタリア人」の実在性が非決定になっているという解釈を試みた。具体的には、まずテクスト前半部において強調される「イタリア人」の異質性を多くの引用を示しながら分析し、その異質性および私/イタリア人の境界線が溶解する瞬間を見事に捉え、それは私とイタリア人が「ドッペルゲンガー」であることの証明であるという結論へと導いた。

 「ドッペルゲンガー」という大胆なテーゼを打ち立ててしまったゆえに根拠の荒さを指摘されることとなったが、境界線が溶解する瞬間および削除部分という二つの着眼点に関しては完全に成功しているとの評価を先生方からいただいた。その証として、助手の小野寺氏はこれら二つの着眼点をもとに一つの仮説を構築することで今回の合宿二度目のピークを迎えた。またトーマス・ベルンハルトというドイツ文学における「怪物」の、その中でも非常に密度の高い初期作品に対して、二次文献に一切頼らず、ドイツ語原文のみを用いて果敢にアプローチした発表者の姿勢は会場の大きな感動を呼び、それは発表後いつまでもやむことのなかった聴衆の「応援」が物語っていると言えよう。

 エクリチュール・フェミニン?エクリチュール・イェリネク!」 
 発表者:井上晴樹(3年)


 今回の合宿の中心となった三年生の二夜に渡る四人の発表の大トリを飾ったのは、エルフリーデ・イェリネクの『ピアニスト』について論じた井上であったが、結論から先に述べればそれはまさに最後にふさわしいものであった。井上は発表の前半部においてまず、既存エクリチュールの政治性、歴史性、つまりそのイデオロギー性を暴露する戦略である「エクリチュール・フェミニン」についての解説を行い、自身の関心を提示した。後半部で取り上げたイェリネクの『ピアニスト』については、比率的には「エクリチュール・フェミニン」の一例としての扱いであったものの(「今回はエクリチュール・フェミニンによってイェリネクを説明したが、いつかはイェリネクがエクリチュール・フェミニンを食う形にしてみせる」と発表者は宣言)、決定的な引用を見つけ出し、その結果発表のクオリティーは極めて高いものになったと言える。

 非常に難解な内容にもかかわらず、多くの質問・意見が出たことは発表が見事にまとまったものであったことの何よりの証であろう。質疑応答は深夜まで続いた。議論の性格上、ラディカルな問いがよりラディカルな問いを無制限に喚起する傾向にあったが、発表者はその全てに対して冷静に応答し、自身の発表に対する深い理解を存分に見せつけた。そんな中、作品中の楽曲選択およびワキ毛に対する藤井先生の鋭いご指摘が印象に残った。
2日目発表文責:3年金

さて、続きましては飲み会報告です。2年幹事である鳥山さんが書いてくれました。合宿飲み会といえば1日目と2日目の区別はもはやつけることはできないので、「飲み会総報告」です。
<飲み会>
1日目、2日目ともに2時間超に渡る発表を終え、あとに続くのは勿論飲み会です。発表後のビールは格別!自分はまだ数ヶ月しか独文にいない身ながら、今合宿の飲み会は実に”独文らしい”飲み会であったといえると思います。
"独文らしい"とは一体なんだ、という感じなのですが、私が独文的だと思うのは、先日の1年生向け説明会でも言及された”でこぼこさ”。


研究対象という意味でも、個人の性格という意味でも、自由気ままでそれぞれのキャラクターが濃い、そんな人々が集まったのが独文なのです。
そんなでこぼこな独文は飲むものも喋ることもすることも感動的なくらいにバラバラです。飲み物はビールは勿論、ワイン、サワー、梅酒、カクテルetc..
一方ではその日の発表についてや文学、ワーグナーの話で盛り上がり、他方ではイケメンの話に華が咲く。屋外では卓球する者あり散歩する者あり(誰も熊の被害に遭わなくてなによりです)、室内ではトランプでマジックや大貧民をやったり、はたまたサッカー観戦に興じる者あり…(1日目はW杯ドイツVSアルゼンチン…結果はドイツの大勝でしたが皆さん勿論ドイツを応援しましたよね?)



なかでも卓球台は合宿を通して活躍していましたが、2日目には山本先生が(午後にはサッカーで活躍されたらしいのに)ひたすら卓球に夢中になっておいででした。
あまり飲んでいないのかなと思って眺めていたのですが、どうやら運動しながらもかなりお飲みになっていたとか。自分はほんの数分参加しただけで筋肉痛になりました。脱帽の一言です。
そんな中、藤井先生は貴腐ワインを学生に振る舞って下さり、シャイフェレ先生はSAKEを片手に室内外を闊歩。「三つ目が○る」のTシャツがお似合いだった大久保先生は別の棟にメイド服を着ている人がいる!と驚愕なさったり…(飲み会の余興だったのでしょうか>メイド服)
部屋へ引き上げるのも自分の好きな時に、自分の意思で、といった感じで、大体朝の5時くらいには全員撤収したでしょうか?
そんな時間まで飲んでいても朝7時半からの朝食にしっかり顔を出すのは流石です。


反省点をあげるとすれば、1日目に栓抜きがなかった、ということぐらいでしょうか。(ちなみに先輩方が馴れた手つきで開けて下さったので、私としては何の不都合も感じませんでした。)
最後に、我が侭な私の為に生ハムを買って下さった幹事さんに感謝です!(文責:2年鳥山)

それでは、3日目発表に続きます。